Game Mediation

PCゲーム、3DCG、哲学など

Layers of Fear トリガーは君だ!

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「トリガーは君だ!」という非常に能動的なキャッチフレーズは全く似合わないのだが性質的にはそんな作品。病んだ画家の精神を体験するホラー。

目を離したのは君だ

ゲームをプレイする際に僕たちは無意識に前提を立てる。「段差はジャンプをすれば乗り越えられる」 「敵は銃で撃てば死ぬ」等々

さて今作はそんなゲーマーでなくても、なんとか分かりそうな前提以前の前提を崩すことを恐怖の対象としている作品だ。「ドアをくぐり行き止まったので引き返そうとするが、そのドアが壁に変わっている。代わっているのだ。」 普通の作品を前提に従っている“フェア”な作品とするならば、今作は非常に“アンフェア”な作品といえる。

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目を離した瞬間に発生する恐怖というのは「いつでも」「どこでも」「何ににも」起こり得る。だから怖い。いつも怖い。アンフェアが故にすべて怖いのだ。

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この怪奇現象が目を背けたくなる不気味でグロテスクなものであるのは間違いない。

しかし、それだけではない。自然現象のような起こるべくして起こるものというより、何かしらの意味が込められた、特定の個人の感情が表出したものと取ることができる。プレイヤーは無為に怖がるだけでなくその“意味”を考えながら、より深い恐怖を味わうことができる。

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Dont look back (double meaning) ※ネタバレ有

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エンドロールの最後に流れるこのメッセージいったいどういう意味なのだろう?先ほどの恐怖システムの説明からすれば「後ろを振り返れば変化してしまうから」という意味で間違いはないと思う。

では他の意味はないのだろうか?日本語でクリアしたプレイヤーなら当然ピンと来ていると思うがこれは「過去を振り返るな」とも読み取れる。

結論から言ってしまえば主人公は人体を練りこんだ絵の具を使用して死んだ妻を描き復活させようとする。しかし失敗する。恐らく1回目だけは現実の世界で行い、その後は自分の病んだ精神世界内でその材料を集めている。そのうちの一回をプレイヤーは体験させられている、というのが僕の考えだ。そしてプレイヤーの番にもその試みは失敗する。

主人公はいつものようにその失敗作を、同じ絵が積み重なった部屋に投げ捨て、新たな“妻の絵”を描き始める…というループ物を思わせる展開で締めくくられる。そう、“過去を振り返るな”というのはこの行動のことを指しているのだ。

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上の画像が病んだ主人公の視点、そして下の画像が現実の視点である。醜く変形していなければ変色なんてしない、まして不気味な笑い声を上げることはない。全ては主人公の妄想だったのだ。

しかし上下の画像をよく比べてみてほしい。上の画像の真ん中(ランプの横)にある絵がプレイヤーが体験した番の絵である。しかし、下の画像にその絵は映っていない。そう、幾度となく妄想を介して描き続けた絵は遂にその存在さえも妄想となり果ててしまったのだ