Game Mediation

PCゲーム、3DCG、哲学など

FPSにおける死体撃ちに対する悪感情について

ウケるリザルト画面

最近リリースされた『Counter-Strike 2』をプレイしている。ここはすごい場所だ。英語や中国語、そしてロシア語で罵声が飛び交い、不毛なナショナリズムが渦巻き、そしてバカとガキと、エイムの追い付いていない知識だけはある老人が息巻いている。

 

VCは罵声から、赤ちゃんの笑い声までバリエーションに富み、テキストチャットではレイシズムとスコアマウントが飛び交っている。

 

こんな終わっている場所にも美点はある。国を掲げて憎しみあってる人たちが、それでも時には同じチームの仲間として一致団結する瞬間がそこには確かにある。それは人類の目指すべき一つの目標としてのコスモポリタン的な輝きの瞬間であり、それ以外の時間は憎しみが増幅されているという点に目をつぶれば素晴らしいものだ。

 

そんなCS2という場所の清濁を併せ呑む自分だが、「死体撃ち」や「屈伸」という行為には明確に「許せない」という感情を持っている。CoDでもApexでもR6SでもValorantでもタイトルは問わない。とにかく死体撃ちを許すことができない。

 

そこで自分がなぜ死体撃ちを許せないのか考え、整理してみることにした。その結果以下の2点が要点としてまとめられた。

 

1,ゲームのルールから導き出されるプレイヤーの行動から逸脱している点

 

2,死体撃ちがゲームのメカニズムを利用している点

 

以下はこの二点について考えていく。

 

死体撃ちはゲームのルールから導き出される行動から逸脱している

記事の初めに言及したように私はVCやテキストチャットによる振る舞いについては、最悪だと思いつつも認めている。少なくとも「死体撃ち」のように存在を許せないほどに憎んでいるということはない。

 

そこから逆説的に考えると私は「死体撃ち」がゲームの目的から逸脱していることに「許せなさ」を見ていると考えることができる。

 

ゲームにはルールがある。敵に弾を当てれば死ぬ、爆弾を設置して解除されなければ勝利する、ゲーム内マネーでアイテムを買う、など明確なルールが定められている。そしてプレイヤーの行動はそのルールに規定される。

 

敵の行動や場所を予測し、ヘッドラインに照準を合わせ、引き金を引く。このプレイヤーの行動は「勝利する」という目的を目指すからこそ生まれるものだ。そして、勝利を目指すという目的からは「既に死んでいる敵を撃つ」という行為は導かれない*1。つまりこの行動はルールに規定されたプレイヤーの行動や目的から明確に逸脱しているのだ。

 

そしてこの逸脱を私は「ゲームという場が汚された」という感覚とともに受け止めている。勝利という究極の目標を巡って競い合う、それ以外の思惑が絡まない純粋な場所として構築されたPvPゲームの中に、逸脱した目的を目にして激しい嫌悪感と落胆を感じるのだ。競い合いたいからこの場にいるのであって、憎しみ合いたいのなら別の場所でやれ、という気になる。

 

死体撃ちはゲームのメカニズムを利用している

次に「死体撃ち」がゲームのメカニズムを利用して行われている点について考えたい。

 

前述したように私はチャットの荒らしやVCについては何も思わない。そこは「文字を打つ」や「声を発する」という最低限のルールしかなく、勝利条件やそれに伴う制約が無い、文字通りゲームの盤外だからだ。そこで起こったことはせいぜいゲームに付随してきたコミュニケーションに過ぎない。

 

だが死体撃ちは違う。本来敵をキルするために用意された武器で、死体撃ちを行う。本来競い合うために用意されたステージや物理演算で敵を侮辱する。崇高とは言わないまでも純粋な目的で用意されたゲームの構造全てが、その悪意にそのまま利用されている。その悪意と悪意への無自覚、そしてその行動に至る無思慮が自分には許せないのだ。

 

以上私が「死体撃ち」に抱く悪感情の分析でした。私がCoD4 MW(2007)でFPSを初めて触ったころから、死体撃ちへの納得のいかなさは募っていた。だが「死体撃ちは文化」であるとか「たかがゲームにマナーを求めるな」という言説を肯定することは、ゲームという媒体を高く評価し、またeスポーツを楽しむようになった昨今では難しくなったように感じている。

 

アンダーグラウンドを長く気取っていたら、いつの間にかただの時代遅れの頑固な人間に成り下がっていたということは今からでも予想が付く。本当にゲームという媒体にリスペクトを持っているのなら、そのリスペクトに足るだけの行動を心掛けるべきだ。

 

*1:「死体撃ちが相手を動揺させ勝利につながる」という詭弁はよく見かけるが、それは自己の行いを後から正当化しているのに過ぎない。死体撃ちをするたびに「勝つぞ~」と思ってやっているのならストイックな馬鹿だ。