Game Mediation

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サイコブレイク/The Evil Within 快適なサバイバルホラーがあってたまるか

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2014年リリースのサバイバルホラーゲーム。当時を思い返してみると評価は真っ二つに割れていたように思う。動作がもっさり、カメラが主人公に近い、なんか黒帯があって画面が狭い等々主に快適なゲームプレイを阻害する要素が槍玉に挙げられていた。本作をクリアした自分の感想を端的に表すなら「神ゲー」、久々に夢中になりました。

本作はサバイバルホラーと銘打つだけあって難易度が高く設定してある。敵は多いにもかかわらず固いので弾薬を節約するプレイが求められ被ダメージは高い。さらに前述したように画面は黒帯に囲まれているのに加えてカメラは近いため状況の把握もおぼつかない。これらの事実が否定的な評価を呼ぶことは想像に難くない。

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↑節約のためステルスキル。しゃがみ歩きは通常の移動よりもさらに遅くカメの歩みのよう。

しかし本作は「サバイバルホラー」である。快適なサバイバルがあってはたまらない。本作にはこの「意図された不快さ」に依存するポジティブな側面を持っている。それはゲームプレイ中プレイヤーが常に付き合っていく戦闘の爽快さだ。

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↑プレイヤーを陥れるための罠を敵に用いる。

弾薬は限られ敵は固いという状況には、それを打開するだけの解決策が用意されている。それは鈍足なステルスキルであったり、環境を利用したトラップであったり、さらには敵を転ばせてマッチで燃やしたりするプレイだ。このような姑息でチマチマした戦闘は究極の目的である「生き延びる」ことに根差すに限って最大限に正当化され楽しいものとなる。

なぜなら弾薬や体力を節約し、静かに敵を殺すことは生き延びるという目的に直接的に益するからだ。仮に「華麗に敵を殺す」ことが目的であれば地味な攻略など何の面白みもなくなってしまう。

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さらに大多数の不評を買った上下の黒帯(レターボックス)と狭い視界にも肯定的な意味を見いだせる。その効果とはゲームプレイと物語の両方の進行をつなぎとめることに他ならない。今作のストーリーはその多くをムービーではなくゲームプレイ中に進行する。この仕様自体は何ら珍しいものではない。ムービーによるゲームプレイの中断はストーリーとゲームプレイを峻別してしまう恐れがある操作だからだ。

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「ゲームプレイステージ」と「演出ステージ」を明確に区別することでその解決を試みる作品がある。対してサイコブレイクはステージを分けるのではなく、通常のゲームプレイに演出を盛り込むことでより高度なゲームプレイとストーリーの一体化を試みる。それは絵画のような構図であったり、主人公を苦しめる幻覚であったり、はたまた主人公が頭をつぶされたりする死亡表現であったりする。これらすべてにおいて視界は狭く、黒帯は表示され続け、動きはもっさりであるためプレイヤーはストーリーがゲームプレイにおいて進行していることを理解することに至る。

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長々と書きましたが記事の締めとしては「面白いからやって」に尽きます。一つのゲームの面白さを素人ブロガーが書き尽くし総評しようなどとはおこがましいことです。結局ゲームを理解するにはプレイすることが一番なのです。