Game Mediation

PCゲーム、3DCG、哲学など

Sam Barlow『Immortality』における神と、黒沢 清『降霊』における霊の交点

※この記事には『Immortality』のネタバレが含まれます。

 

この記事では前回の記事では展開しきれなかった『Immortality』と『降霊』という二つの作品の超常的なものに対するまなざしについて書いていく。

 

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Immortality 不死性の条件

※この記事にはネタバレが含まれます

『Immortality』から受けた衝撃を引きずったままメルカリで以前から気になっていたDVDを購入した。黒沢清の『降霊』だ。なんでも「見える人」からの評判が良いらしく、映画に映る幽霊は本物に近いらしい。

 

届いたDVDを再生しラスト6分に差し掛かったころ、ディスクの傷が原因で映像は進まなくなってしまった。映像に記録するという行為は一見、人間の寿命を超えて後世に作品を残す、という意味で無限性に接続するものに思える。そんな思いはDVDの傷という即物的なものによってあっさりと否定された*1

 

何が言いたいのかというと映像という無限性や永続性に接続されたように見えるものも、DVDなどの映像媒体という物理的で有限なものに規定されているのであって、その無限性は思いのほか脆いということだ。

*1:一方でこれは尺度の問題だということもできる。人間の一生を一つの世界と考えるのならば、その一生を超える持続性を永遠と”形容”することも不可能ではないだろう。今回のDVDは30年も持ってないわけだが

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絶対に被らないSteamサマーセールおすすめ作品 8選

私は皆さんがこの記事に辿り着いたようにSteamで大型セールが始まる度にオススメの作品を漁ります。オススメまとめ画像ツイートを読み漁り、まとめブログを読み漁り、あまつさえフレンドが購入したゲームをアクティビティで監視します。最後の方法は割と有効ですが、オススメまとめ記事が有効だったことはこれまで殆どありません。何故なら大抵の作品の情報は自分で既に集めているからです。

 

僕が読みたいのはまだ見ぬ作品、それもサンプル数1でもいいので誰かが魅力的だと感じてオススメしている作品です。そこでこの記事では僕がこれまで読み漁ってきたオススメには一切登場しなかった、僕のオススメ作品を紹介します。この記事を読みたいのは誰よりも僕自身なのですが僕は既にプレイしているので意味がありません。みんなこういう記事を書いてくれ。

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『Inscryption』代替現実ゲームという世界観の破壊

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先日『The HEX』をプレイして『Inscryption』への違和感が言語化されたのでここに残す。『The HEX』は『Inscryption』と同じDaniel Mullins Gamesが開発した作品で、『Inscryption』の前作にあたる。

 

※この記事には『Inscryption』のネタバレ、『The HEX』の軽微なネタバレが含まれます。

 

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地方民が感じる『Ghostwire Tokyo』への疎外感

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うおー!スクランブル交差点だー!知らねえーーー!

『Ghostwire Tokyo』は現代の東京を舞台にした一人称除霊アクションだ。住民は謎の霧に呑まれて文字通り霧散しており、主人公ひとりが霊と対峙しながら東京を練り歩く奇妙なシチュエーションを体験することとなる。※微ネタバレ有

 

特筆すべきはこの東京が現実世界のそれをかなり忠実に再現しているという点だ。Twitterでの発言によると「○○(地名)に行け」と言われたら、東京に馴染みのある人間はゲーム内マップをみずとも行けるくらいの再現度らしい。

 

「らしい」というのは私は東京に住んでいないのに加えて、人生で2回ほどしか東京の地を踏んでいない人間である故の表現だ。なのでいくらこの作品が東京を忠実に再現しようとも私には普通の作品と同じく「ただダンジョンが並んでいる」のに過ぎないわけだ。

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透明な蓋に覆われた世界 『OMORI』

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『OMORI』と言う作品をどう表現しよう。一番有名なのは死やうつ病をテーマとした作品というものだ。またSteamのストアページのタグから取ったのか、2Dサイコホラーとして紹介されることも多い。またコラボしていることも手伝って『Undertale』や『DDLC』に似た作品というむきもある。

 

だが最後の印象に関しては強く反論したい。『OMORI』にはこれらの作品に対して「透明な蓋」がしてあると言う特徴を持つ。ここからは『OMORI』に加えて上記の作品のネタバレを含みながら論じていく。またこの反論を通じて『OMORI』が死やうつ病をテーマとした作品という一見文句のつけようがない表現にも部分的に反論を加えたい。

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