『Layers of Fear』や『>observer_』の開発として知られるBloober Teamの最新作『The Medium』。この作品はチームがこれまで手掛けた作品の中で最も大規模で意欲的な作品らしい。どの点が意欲的なのか、そしてBloober Teamの作品を気づいたら殆ど遊んでいた僕の感想はどんなものなのか語っていく
三人称視点・固定カメラ・二つの世界
この作品がこれまでの作品と比べて意欲的であると言われる点はどこにあるのか。それは第一に三人称視点を採用しているという点にある。Bloober Teamの作品は『>observer_』(2016)以降すべて一人称を採用していることを考えるとこの変更はかなり大きい。この変更に伴ってカメラは固定カメラが採用された。
一人称視点においてプレイヤーに任せられていたカメラのコントロールがゲーム側に移った。この変更によってよく作りこまれた精細な世界が効果的な角度や距離で映されるようになった。高クオリティなオブジェクト一つ一つが丁寧に配置されており、画として完成している。
さらに今作にはトレイラーでも前面に推されていた「二つの世界」を利用したゲームシステムが導入された。これまでの作品はとにかく「歩く」ということに尽きるゲームであり、いわゆる「ウォーキングシミュレーター」というジャンルの枠の中にあった。しかし、『The Medium』は物理世界と精神世界を行き来するというゲームシステムを導入することでアクションやアドベンチャーと呼べるジャンルの作品となっている。この「ウォーキングシミュレーターからの脱却」が個人的には最も意欲的な点に感じた。
クオリティのばらつき
それではこれらの特徴が全てうまく機能しゲーム全体の出来を押し上げているのか、というと決してそうではない。なぜならこの作品で僕が最も印象に残ったシーンは開始30分の最初のチャプターだったからだ。そこには「2つの世界」システムは未だ登場しておらず、三人称視点と固定カメラだけで高品質なゲームプレイを実現していた。
物語が展開し始めるそれ以降のチャプターは最初のチャプターと比べて引きの画が多くなる。せっかく作りこんだオブジェクトが固定カメラのために近づいて見ることができなくなり、そのせいで画面全体がチープに映る。固定カメラも序盤程キマッった角度でゲームを移すことがなくなり全体的に雑な印象を受ける。
また今作のウリである「二つの世界」システムを用いる場合も2つの世界の違いを引き立たせるために引きの画が多くなってしまい、面白い構図を実現する反面ふつうに見辛くなってしまった。
画作りという点から見るとこの作品は序盤のチャプターがあまりにも完成されすぎている。物語が進むにつれて完成された画が崩れていくという点でバランスを描いた作品だといえる。これまでの作品からテイストをガラッと変えたという点で、この作品は意欲的であると評価できるが、それがこれまで培ってきた画面の構成を尽く壊してしまっているように感じる。
しかし、この記事では触れなかったが三人称視点を採用したことによって「誰が主人公なのか」ということをハッキリさせたことにはストーリー上で大きな意味があったのは確かだ。おぼろげなストーリーを語りがちなBloober Teamが明快な物語を語りきったという点は良かった。
とにかく近景が良い
個人的なこの作品の一番の評価点は 「近景がとにかく良い」ということに尽きる。実写と見まごうオブジェクトと説得力のある配置は一見の価値あり。開始30分はそれらで満ちているのでぜひプレイしてもらいたい。